Innovation Case Study 01 Hanasakisen

Case Study

地域のインフラを守り、全国にファンを広げる「花咲線プロジェクト」

釧路駅と根室駅を結ぶ日本最東端の鉄路、JR根室本線花咲線。大正10年の開通以降、人々や物流を支えてきましたが、利用客数は約40年前に比べ7分の1に減少。JR北海道は2016年11月、本線区を「単独では維持することが困難な線区」に指定しました。沿線自治体の一つである根室市は本線区の維持存続のため、利用者向上を目的としPR施策を実施。こうしてスタートしたプロジェクトは、一体どのように進められていったのでしょうか。

花咲線の魅力を多くの人に知ってもらいたい

瀬川 担当営業として、この企画のコンセプト作りから各事業の企画・進行等の全般を実施しました。根室市やJR北海道の担当者との調整をはじめ、施策を計画通りに遂行するために全体を把握しながら推進する役割を担いました。

姉崎 コピーライター・プランナーとして、花咲線の魅力を知ってもらうためのネーミング開発やコピーの作成、WEBやポスターなど各種制作物の企画にまつわるものを担当しました。

 私はWEBプロモーションを担当しました。誰に、どの媒体を、どのタイミングで見せるのが効果的なのか、予算内でいかに効果を最大化させることができるかを念頭にプランニング・運用を行いました。

「絶景と食」を切り口に
「地球探索鉄道 花咲線」が誕生

瀬川 「花咲線」は愛称で、釧路と根室を結ぶ135.4kmの鉄路をそう呼んでいるのですが、沿線にはラムサール条約登録湿地が位置し、乗車すると車窓には森林や牧場、太平洋などの景色が次々と展開します。また、厚岸の牡蠣、根室のさんまなど、全国的にも有名な食の宝庫でもあります。このエリアにしかない「絶景と食」の強みを最大限に活かすため、「地球の魅力を体感する観光路線」としてリブランディングを実施することにしました。

姉崎 湿原や原生林、複雑な海岸線を走る花咲線ならではの地理的特徴が作り出す絶景と、豊かな食。この二つの魅力を伝えるために「地球探索鉄道 花咲線」というコンセプトを考えました。さらに、「花咲線自体が観光の目的になること」「沿線の市町村単位ではなく、花咲線沿線全体の地域ブランド化を図ること」を目指し、活動をスタートしました。そこで行ったのが、有名写真家による地域の絶景ポイントの掘り起しと撮影、各種告知ツールの作成、PRサイトの立ち上げなどです。

 WEB上で花咲線乗車を追体験できる2時間30分の長尺ムービーを制作し、WEBサイトやSNSを通じて「絶景×食」の情報発信を行うことになりました。

瀬川 リブランディングの情報発信と並行して、根室市はふるさと納税を活用したガバメントクラウドファンディング(GCF)を開始しました。今後の活動費を確保するともに、全国に向けて花咲線の支援の輪を広げることが目的です。地元だけでなく、全国の皆さんの応援も力にしながら、継続的な活動をするための環境を整えていきました。

関わる人々が全員、WIN×WINになる形を模索

瀬川 とはいえ、最初から全てスムーズに進んだわけではありませんでした。花咲線には、クライアントである根室市だけではなく、他の沿線自治体やエリアの事業者、JR北海道など、さまざまな人たちが関わっています。それらの人たち全員がWIN×WINになるような形で業務を進める必要があり、さまざまな立場の方と交渉や調整をしていきました。

姉崎 最も印象に残っているのは、釧路~根室間の2時間半にわたる動画の撮影と、撮影した素材の編集です。3名の写真家さんたちと細かくスケジュール調整をし、制作に関しても丁寧にやり取りしながら進めていきました。

 花咲線の自然の魅力を最大限伝えることが大事だと思っていたので、元素材である静止画や動画の良さを生かしつつ、WEB上でどのように表現するのが望ましいか、そこが一番悩んだところでした。

GCFは目標の約9倍の3億円を達成

姉崎 リブランディング活動が話題を集め、根室市主導でスタートした活動も、JR北海道を巻き込んで「地球探索鉄道 花咲線」のコンセプトを踏襲した特別車両の導入が決定。沿線自治体も盛り上がり、花咲線のニュースが連日報道されて多くの方に注目していただけました。

瀬川 2018年6月1日から始めたGCFは、目標額3,300万円の約9倍にあたる3億円が集まりました。また、2019年7月には利用可能性調査として、期間限定での2両編成の試験運行を実施。新聞にも取り上げられるなど、大きな話題になりました。

橘 Instagramのバナー広告では13,000件を超える「いいね!」を獲得することもできました。クリエーティブチームと連携しながら、写真を見せる順番や動画の尺など、各媒体との相性も踏まえながら最適な見せ方を模索したことが良かったと思います。

地域創生に関わる責任感と
地元の役に立てた喜び

橘 このプロジェクトは北海道の地域創生に直結した案件であり、その一員に加わることの重大さを感じました。入社の志望動機の一つに「北海道を盛り上げること」を掲げていた私が目標としていた仕事でもあり、プロジェクトに関われたことを誇りに思います。

瀬川 根室市の方々とお話をしていると、北海道・地域の未来やまちづくりに対する思いがひしひしと伝わってきます。地域の財産である花咲線を発信するというとても貴重な機会をいただき、大きなやりがいを感じました。実は私は、この事業を担当して初めて花咲線に乗ったのですが、初乗車の感動は今でも忘れられません。次々に現れる見たことのない絶景、現地での美味しい食べ物。自身が体験したこの感動を多くの人に伝えたいという純粋な動機も、この仕事のモチベーションとなっていました。

姉崎 「人々の生活に密接に関わるインフラをPRする」という責任感を感じながら、みんなに愛されるキャラクターを大切に育てていくようなイメージでコツコツ進めてきました。クラウドファンディングでは全国からたくさんの方が応援してくださり、本当にありがたかったです。そして何よりも、根室市の方が一緒に喜んでくださったのがとてもうれしかったです。これからも、地域の課題を解決するお手伝いが少しでもできればと思います。

  • 地球探索鉄道 花咲線 ポスター
  • 地球探索鉄道 花咲線 新聞広告
  • フリーペーパー『花咲 点と線』